実際にポータルがある場所まで行って遊ぶのが特徴のIngressは、地域の観光振興への活用を期待する声も多い。
「XM Anomaly」や「MISSION DAY」、「First Saturday」などの公式イベントが様々な地域を舞台に開催されており、開催される地域は一躍Ingressファンの間で注目の的となる。最近は、自治体や地元の有志が独自にイベントを企画する例も増加中だ。
Ingressプレイヤーには、ブログやSNSでの情報発信に積極的な人も多いため、イベントへの参加レポートなども数多く投稿され、地域の魅力を広めるのに一役買っている。
この特集では、Ingressのイベントの種類を解説するとともに、このようなIngressを利用した地域振興の事例を一挙に紹介していくぞ。
「XM Anomaly」は、特殊なルールで両陣営が勝敗を争う最大規模の公式イベントだ。
受付やパーティが行われる会場に行くと、ゲーム内のプロフィール欄に表示される記念メダルを入手できる他、交流パーティや自主制作グッズの販売会なども実施される。
日本では、2013年8月の「Cassandra」で東京、2014年5月の「Interitus」で宮城県石巻市、2014年の12月の「Darsana」で東京、2015年3月の「Shonin」で京都、2015年6月の「Persepolis」で仙台が開催地に選ばれ、多くの来場者で賑わった。2015年12月には「Abaddon」が沖縄で開催予定となっている。
開催都市が少なめなので、選ばれた都市は国内外のIngressファンから注目を集め、国外からも多数の参戦者が訪れるぞ。
「MISSION DAY」は、開催都市周辺に用意された「ミッション」をクリアして受付で申告することでゲーム内の記念メダルをもらえるという公式イベントだ。日本では、2015年6月の仙台でのPersepolisイベントの翌日に東北の7箇所で開催された他、10月に千葉県君津市と神奈川県横須賀市で開催。12月には、Abaddonの翌日に沖縄での開催が決まっている。
自治体とも緊密に連携して準備され、記念品のプレゼントなど様々な企画を盛り込んだ大々的なイベントになっている。2015年8月に行われた開催都市の募集では、応募が殺到して予定より早く受付が締め切られるほどの注目を集めていた。
毎月第1土曜日に開催される「First Saturday」は、上級者が初心者のレベルアップを支援する「レベルアップ・ブートキャンプ」を中心としたイベントだ。
公式イベントの中では開催のハードルが低めで、国内だけでも毎月いくつもの都市で開催されているぞ。
Ingressのイベントとしては、陣営をこえたプレイヤー同士の交流会である「クロスファクションミートアップ」もある。Niantic Labsの関係者が参加する公式のものの他、プレイヤーの有志によって独自に企画される非公式のものもあるぞ。
・Cross-Faction Meet up at Kagoshima city, Kagoshima – Google+
・Cross-Faction Meet up at Shizuoka City, Shizuka – Google+
・Cross-Faction MeetUp, Nagoya, Aichi – Google+
Ingressの公式サイトや公式Google+アカウントに掲載される公式イベントの他にも、自治体や企業などが独自のイベントを開催することもある。指定のミッションをクリアすることでオリジナルの記念品を貰えるという形式の企画になることが多いようだ。
また、イベント開催などが決まる前からサイトを立ち上げて、地域のポータルやミッションの情報などを発信している地域もあるぞ。
MISSION DAYや独自イベントなどで使用される「ミッション」は、指定された一連のポータルを訪れてハックなどのアクションを実行することでクリアとなるスタンプラリー的な要素だ。
MISSION DAYでは、名所のポータルを巡ったり景色が良い場所を通るなど、地域の魅力を感じられるミッションが新たに用意される。
自治体や地元有志によるIngressの活用例
日本におけるIngress活用自治体の第一人者と言えるのが岩手県だ。2014年9月に県庁内の有志で「岩手県庁Ingress活用研究会」を立ち上げ、独自イベントの開催などを積極的に実施している。
2014年11月に開催された「ポータル探して盛岡街歩き」は、小規模な独自イベントながら50人以上の来場者を集めた。企画を知ったNiantic Labsの運営陣の厚意でポータル申請が優先的に処理されたことで話題を呼んだ。
2015年2月には独自イベント「ハック&キャンドルin盛岡」、6月には盛岡と陸前高田で「Mission Day in Tohoku」を開催。
11月に開催された独自イベント「いわて・ぐるっと・Ingress IGI★200+100」は、UPV(訪問済みポータル数)の上昇数に応じた特典を用意するという独特のシステムや、ミッションのアイコン原画の展示会など、ユニークな要素が多数盛り込まれたイベントになっていた。
・岩手県 – 岩手県庁ゲームノミクス研究会(旧岩手県庁Ingress活用研究会)
特設サイトなどは用意されていないが、宮城県でもIngressのイベントが数多く実施されている。
2014年5月には「XM Anomaly Interitus」とともに「Ingress Meetup in Ishinomaki」を開催。iOS版公開前のIngress黎明期ながら、100人近い参加者が集まった。また、7月には「ISHINOMAKI STAND UP WEEK 2014」内で独自イベント「Ingress Meetup Ishinomaki Returns」を開催。
2015年6月には、仙台で「XM Anomaly Persepolis」が開催され、4000人以上が来場。翌日の「MISSION DAY」は、仙台の他に女川、石巻でも開催され、それぞれ500人以上の参加者が集まった。
7月には、Ingressとのタイアップを開始したばかりのソフトバンクと組み、タイアップミッションやオリジナルステッカープレゼントなどの企画を実施。
11月には登米市で独自イベント「Ingress in Toyoma~とよま街あるき~」が開催された。
・Ingress Meetup in Ishinomaki | イトナブ
・【宮城県内ショップ限定】Ingressタイアップ特別企画、ご来店で宮城県限定のオリジナルステッカーをプレゼント! | ソフトバンク
茨城県では、地域PRの動画を配信している「いばキラTV」内で、「HACK IBARAKI」としてIngressの遊び方や県内のIngress関連情報などの動画を配信している。
・HACK IBARAKI INGRESS (イングレス)|エンタメチャンネル|茨城県が運営するインターネットテレビ いばキラTV
最近新たにIngress活用に名乗りを上げて注目を集めているのが、千葉県の君津市だ。
2015年10月に開催した「MISSION DAY」では、記念品プレゼントや特設シャトルバスの提供など充実した企画を盛り込んで話題となり、約900人もの来場者で賑わった。
MISSION DAY開催に向けて、Google+アカウントやIngress風デザインの特設サイトを開設して情報を発信。MISSION DAY終了後も、「亀山オータムフェスティバル」にあわせたミッション企画を実施するなど、精力的に活動を続けている。
イベントの前はあまり知られていない街だったが、イベントを開催したことでIngressファンの間では一気に有名になったぞ。
・Kimitsu_City Local_Tourism_Division – Google+
・君津市のミッションデーをお手伝いしてきましたよ|イングレス初心者講座 わんこ団子
東京都の東村山市も、特設サイト「Ingress東村山観光案内所」やSNSアカウントを開設し、ポータルやミッションの情報を発信。
2015年3月に「東村山をまるごとHACKせよ!」、7月に「ひがっしー Birthday anniversary」、11月に「映画「あん」のロケ地をHACKせよ!」と、次々に独自のミッション企画を実施している。
・ひがっしー Birthday anniversary / INGRESS MISSIONISTA
・東村山INGRESS! 映画「あん」のロケ地をHACKせよ!/Ingress mission in 東村山
・INGRESS in 東村山(@ingresshm)さん | Twitter
東京都国立市では、2015年11月の「天下市」にあわせて「国立天下市×INGRESS」としてミッション企画を実施。
無料の休憩所として用意された「ぽっぽcafe」では、Wi-Fiアクセスポイントや充電器など、Ingressプレイを助けるサービスが提供された。
・9月23日(水・祝)Ingressで地域活性 国立市の天下市に向けて | Chika-ba[ちかば]
・くにたちMate | 立花杏と立花桃、くにたちに暮らす双子の物語。
2015年10月には、川崎市の有志によるミッション企画「江戸を支えた津久井街道の歴史を巡ろう」が実施された。東京都世田谷区から西へと続く「津久井街道」に沿った6つのミッションを用意。世田谷区内でマクドナルドのフランチャイジー店舗を展開する株式会社ドリームの協賛により、ミッションクリアで得られるメダルの画面を見せることで対象のマクドナルド店舗で割引を受けられる特典が用意された他、2つ以上のミッションをクリアすることでグッズプレゼントの抽選に応募できるなど、力の入った企画となっていた。
・江戸を支えた津久井街道の歴史を巡ろう / INGRESS MISSIONISTA
神奈川県川崎市の登戸駅前商店街では、これまでに4度に渡ってミッション企画が実施されている。
2014年12月の第1弾は、指定ミッションのクリアで対象店舗の1ドリンクサービスという簡素なものだったが、「登戸はしご酒」イベントに伴っての開催となった2015年の2月の第2弾、7月の第3弾、11月の第4弾では、記念グッズや抽選による豪華賞品のプレゼントなど本格的な企画となり、特設ページも用意された。
・今度は川崎市の登戸駅前商店街で1ドリンクのリアル報酬キャンペーン – Ingress Missionista
・川崎市登戸駅前商店街 INGRESSリアル報酬キャンペーン第2弾 指定のミッションクリア+はしご酒イベント参加でCheero Ingress Power CubeをGETせよ!/ よっしゃこい登戸
・登戸はしご酒 x INGRESS – Ingress Missionista
岩手と並んで積極的にIngressを活用しているのが、神奈川県横須賀市だ。活動開始は岩手より遅い2014年12月だが、本格的な特設サイトを設けた自治体としては日本初。獲得MUランキングの集計エリアにまで言及するマニアックさが話題となった。
2014年12月から2015年2月にかけて実施された猿島へのフェリー料金割引企画では、5622人の渡航者のうち455人が利用。「猿島」で検索して市の観光情報サイトにアクセスした人は1年前の3.5倍に増えるなど、多くの成果があった。
以降も多数の公式ミッションを公開し、2015年2月に「MISSION OF YOKOSUKA」、3月に「SAKURA MISSION CAMPAIGN」、5月に「岩手県×横須賀市 友情の架け橋ミッション」、8月に「偉人ミッションプレゼントキャンペーン」と、次々にミッション企画を実施。プレゼントには第1弾は290人、第2弾は256人の応募があったとのことだ。
10月には、軍艦をモチーフにしたキャラクターが登場するアニメ「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」とタイアップしたミッション企画を実施、10月31日にはMISSION DAYを開催するなど、活発な活動を続けている。
・STRATEGY BASE FOR INGRESS IN YOKOSUKA
・Ingress × 地方自治体イベントレポ★「結局、イングレスで観光振興できるって本当だったんですか?」
神奈川県大和市では、特設サイト「YAMATO de Ingress」やTwitterアカウントで地元のミッションなどの情報を発信。2015年9月にはFirst Saturdayが開催された他、11月には独自イベント「Yamato Mission Marche」を開催するなど、着実に活動を続けている。
富山県では、2015年10月に開催される「文化庁メディア芸術祭富山展 トヤマウォーカー」内でIngress関連の展示やトークセッションを実施。
「虚構新聞」に嘘ニュースを掲載するという異色のコラボレーションで注目を集めた。
・トヤマウォーカー|文化庁 メディア芸術祭 富山展
・事前ワークショップ|富山のまちをハックしよう!富山のまちを再発見しよう! | トヤマウォーカー|文化庁 メディア芸術祭 富山展
長野県松本市では、2015年11月に「Ingressで城下町松本を歩こう!」が開催された。指定のミッションをクリアすることで、松本城の普段は非公開となっている部分を観覧するツアーに参加できるという、地域の名所を活かした企画となっていた。
・松本市が「イングレス」イベント初開催 「松本城天守プレミアム観覧」特典も – 松本経済新聞
愛知県常滑市では、愛知県立大学Ingress研究会と常滑商工会議所らによって、2015年11月に「TOKONAME INGRESS TRIP」が開催された。
指定のミッションをクリアした人には地元の特産品である常滑焼で作られたオリジナルバッジがプレゼントされた他、知多半島をPRするイメージキャラクターである「知多娘。」ともコラボレーションするなど、充実した企画が盛り込まれていた。
・TOKONAME INGRESS TRIP – Google+
・11/7(土) イングレスin常滑 に知多娘。が参加します | 知多娘。公式WEBサイト
徳島県では、2015年11月の「とくしまICTバザールVol.1」内で、「まちなか探検隊 in 徳島」としてミッション企画を開催。
「オープンストリートマップ」や「LocalWiki」など、Ingressだけにとどまらず、様々なネットサービスを活用した地域PRを試みている。
高知県東部の9市町村で開催されている「高知家まるごと東部博」では、「イングレスミッションin東部博」としてミッション企画を実施。
用意された6つのミッションをクリアすることで、それぞれのミッションに対応したオリジナル缶マグネットがプレゼントされる。
2015年7月末から12月23日までという独自イベントの中でもかなり長い実施期間のイベントとなっている。
鹿児島では、地元の有志が「かごしまイングレス研究会」を発足し、「INGRESS ADVENTURE in 大隅 2015」「天文館六月灯りゆかた祭り×イングレス」「パンマルシェ天文館×イングレス」などのミッション企画を実施。定例の勉強会を毎月実施するなど、活発に活動を続けている。